身元保証人とは
■就職で使われる「身元保証」について
就職の際に求められる保証人は、身元保証人、保証人、連帯保証人と会社により様々ですが、それぞれの責任に違いはあるのでしょうか?
この中で実際に多く使われている言葉は「身元保証人」です。
「身元保証人」は言葉からは入社する方の素性などを証明するイメージですが、上記の3つの言葉はいずれも昭和8年に公布された「身元保証に関する法律」により同じ責任があります。
身元保証書に書いてある「保証内容」も会社それぞれ事なり、小さな責任から大きな責任の違いがある様に見えますが、大きくは以下の2つの事を意味しています。
・会社のルールを守り、忠実に業務にあたる事を保証する
・故意又は過失により会社に損失を掛けた時に連帯して賠償する
従って就業する本人は、就業時に受けていただいた身元保証人、保証人、連帯保証人には厚意を裏切る事なく、責任のある行動が必要と言えます。
■いつまで保証をしないといけないのか?
しかし、就業期間は人により何十年と長く務める方ですと、保証人も何十年も責任を持ち続けないといけないのか?という不安がありますが、こちらも「身元保証に関する法律」により保証期間の設定があり保証人が際限なく責任を持たなくても良い決まりになっています。
・期間の設定がない場合は3年間の保証責任
・商工業見習い者の場合は5年間の保証責任
・身元保証の期間は5年を超える事が出来ない
この事より、特に5年間は誠実に勤務をする様に心がけたいです。
勿論、その先もこの5年間と同じ気持ちを持つ事は大切ですが。
■保証人契約を解除出来ないのか?
又、保証人は以下の権利を持つ事も出来ます。
使用者の責任として「本人の不適任や不誠実、任務、任地」の保証人への報告により保証人の責任が重くなる時、保証人は保証を解約する事が出来ます。
これにより、入社後の就業状態により保証人は継続すべきか否かの判断をする事が出来ます。
■2020年4月民法改正について
更に保証人を守る為に以下の事が追加されました。
・保証人の賠償額に対して「極度額」を設定、明記しないといけない
・就業する本人より保証人に「財産、収支、債務」の状況を伝えないといけない
これにより今まで決まっていた最長5年間の保証期間に最高賠償金額の設定が追加されたので、より保証人のリスクが軽減されました。
現在アルバイトでも保証人が必要な時が多くありますが、保証人になっていただく時は本人が保証内容を良く把握する事と保証人に保証内容をきちんとお伝えする事が大切です。
■身元保証に関する法律
公布:昭和8年4月1日
第一条
引受、保証その他どのような名称であっても、期間を定めずに被用者の行為によって使用者の受ける損害を賠償することを約束する身元保証契約は、その成立の日より三年間その効力を有する。但し、商工業見習者の身元保証契約については、これを五年とする。
第二条
1.身元保証契約の期間は、五年を超えることはできない。もしこれより長い期間を定めたときは、これを五年に短縮する。
2.身元保証契約は、これを更新することができる。但し、その期間は、更新のときより五年を超えることはできない。
第三条
使用者は、左の場合においては、遅滞なく身元保証人に通知しなければならない。
1.被用者に業務上不適任または不誠実な事跡があって、このために身元保証人の責任の問題を引き起こすおそれがあることを知ったとき。
2.被用者の任務または任地を変更し、このために身元保証人の責任を加えて重くし、またはその監督を困難にするとき。
第四条
身元保証人は、前条の通知を受けたときは、将来に向けて契約の解除をすることができる。
身元保証人自らが、前条第一号及び第二条の事実があることを知ったときも同じである。
第五条
裁判所は、身元保証人の損害賠償の責任及びその金額を定めるとき、被用者の監督に関する使用者の過失の有無、身元保証人が身元保証をするに至った事由及びそれをするときにした注意の程度、被用者の任務または身上の変化その他一切の事情をあれこれ照らし合わせて取捨する。
第六条
本法の規定に反する特約で身元保証人に不利益なものは、すべてこれを無効とする。
附則
本法施行の期日は、勅令(昭和八年勅令二四九号)によってこれを定める。
本法は、本法施行前に成立した身元保証契約にもこれを適用する。但し、存続期間の定めのない契約については、本法施行の日よりこれを起算し、第一条の規定による期間、その効力を有する。存続期間の定めのある契約については、本法施行当事における残存期間を約定期間とする。もし、この期間が五年を超えるときは、これを五年に短縮する。
以上
■2020年4月1日以降、改正民法の施行により、「身元保証制度」が以下のとおり変更
1 賠償に関する上限額を定めなければならない(定めがない場合は契約が無効)
2 従業員から身元保証人に対し、一定の情報提供がされなければならない
・財産や収支の状況、他の借金などの債務の有無と金額及び返済状況
借金やローンなどの「保証人」は、民法第446条において「債務者がその債務を履行できない場合、代わりに履行する責任を負う」とされ、万が一のときは「代わりに支払います」と約束させられるに等しいものです。しかし、就職の際の「身元保証人」は、イメージよりはるかに有利な立場に設定されています。
入社内定者(被保証人)の手続きをする際、多くの企業は、
・被保証人が会社の就業規則を守り、忠実に勤務すること
・被保証人が会社に損害をかけた場合、その賠償責任を負うこと
を「身元保証人」に約束してもらいます。
被保証人の親族や友人、恩師などが一般的だが、いくら親しい間柄とはいえ在籍する間ずっと責任を負うなんて割に合わないですよね。そこで「身元保証二関スル法律」では期限や条件が定められ、必要以上に責任を負わなくて良いように配慮されているのです。